空調設備ではポンプは欠かせないものです。主に空気調和機器や冷凍機器などの補助機器として冷温水ポンプや冷却水ポンプ、ボイラーなどの温水ポンプなどに使用されています。今回は点検整備で行うメカニカルシールの交換方法の仕方について空調メンテナンス歴30年の私が初心者向けにわかりやすく解説します。
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メカニカルシールのメリット・デメリット
メカニカルシールについてメリット・デメリットをいくつかあげます。
メリット
1、メカニカルシールは自動シール調整でメンテナンスフリー。
2、漏水が少ないので余分な補給水がされなくて経済的。
3、漏水が少ないのでポンプがサビにくい。
4、メカニカルシールの交換時シャフトは再使用できる。
5、冷温水ポンプまたは温水ポンプにお勧めです。※仕様は要確認。
デメリット
1、メカニカルシールから水が漏れだすと調整ができない。
2、メカニカルシールは高額。
3、メカニカルシールの交換はポンプ分解が必須で専門業者にお任せしなければいけない。
ポンプ分解前の準備
1、ポンプ分解前に対象機器を確認し制御を断にし電源ブレーカーをOFFにします。
※作業中につき投入禁止のシールも張りましょう。
2、バルブ操作、ポンプを分解するのでポンプの吸い込み側と吐出側のバルブを閉めます。
3、水抜き作業をします。
圧力がかかっているので水圧を0Mpaにします。
ゲージを確認しながら水抜きバルブを開けて一旦水圧を0Mpaにし再び水抜きバルブを閉めます。
しばらくゲージを観察し水圧圧力が上がってこなければ(2)で操作したバルブが完全に閉まっていると判断できます。
判断できたら再び水抜きバルブを開けてポンプの中に溜まった水を抜いていきます。
この時、(2)のバルブ間内でなるべく上のほうからエアーを吸わしてあげるとスムーズに排水してくれます。(呼び水バルブがあればバルブを開ける、または吐出ゲージを外してエアーをいれる)
水が出なくなったのを確認できたらポンプ分解です。
ポンプ分解
軸受けがオイル使用はこちら
【メカニカルシール】ポンプ分解整備 軸受滑走油タイプ&メカニカルシール交換編
今回は荏原製作所製のポンプを例に説明します。
1、モーターの足元のボルトを外しモーターを少しずらします。この時モーターが転げ落ちないように工夫して下さい。

2、ポンプの渦巻室はそのままでフランジから外します。

フランジから外した状態。

3、ポンプ取り外し分解前。

ポンプ分解、分解しながらどう組まれているか確認しながら分解します。

メカニカルシール交換
1、メカニカルシール取り外し前
六角レンチのセットボルトを外す前にリングの位置をノギスなどで測定しておくとあとでセットしやすいです。

2、メカニカルシール交換
下の写真が新旧の部品です。ビニールに乗っている下部がメカニカルシール(新)です。

メカニカルシールの取り扱いには破損しないように十分注意します。
3、メカニカルシールの取り付け、ワセリンなどをゴム部とシャフト部に塗布するとはめ込みやすいです、リングの位置は元通りセットしないとしっかりシールしないと水漏れの原因になります。

グランドパッキン仕様からメカニカルシールに変更できるポンプもあります。別のサイトで紹介していますので下記の記事を参考にしてください。
ポンプ組み立て・取り付け
1、ポンプ組み立て後、シャフトを手回して軽く回るか確認する、必ず確認し重たければ組みなおすこと。

2、ポンプ取り付け、パッキンを取り付け、ボルトの閉め忘れに気を付けること。

ポンプ取り付け後もシャフトを手回しして軽く回ることを確認します。
心出し調整
心出し調整。

整備完了
整備完了。

試運転前の準備
水を張っていきます。
吸い込みバルブと吐出バルブの開復旧には注意が必要です。
1、水抜きバルブが閉まっていることの確認。
2、水を抜くときに開けたエアー抜きバルブを閉める、または外したゲージを復旧する。
3、(1、2)が確認できれば、吸い込みバルブから少しずつ開けていきます。
4、圧力が上がっていくことを確認しながら、異常水漏れがないかも確認します。
5、圧力が安定したら全開にし、吐出バルブも前回にします。
6、バルブを全開にし異常水漏れもなしと、確認がとれたら配管最上部にあるエアー抜きよりエアーを抜きます。(自動エアー抜きが施工されていれば必要なし)
試運転
試運転をしていきます。
電源投入、OFFしていたブレーカーをONにします。
制御切り替えスイッチを単独または手動にします。
運転スイッチを押すと試運転になりますが整備後初めて運転するときは2秒間運転し異常水漏れ、異常音がないか様子を見ましょう。
問題なく運転できれば次は10秒間運転します。この時に確認することは運転電流です。電流計の針の振れ幅が大きいとポンプにエアーが残っています。手動でエアーを抜くか2秒運転を繰り返すかを実施しエアーを抜いていきます。
※エアーが混入したまま連続運転するとメカニカルシールが損傷することがありますので気を付けましょう。
電流計も安定すれば吸い込み圧力、吐出圧力を測定。
異音、振動を確認しメカニカルシール交換完了です。
まとめ
メカニカルシールは完全に水をとめるものではありません。
メカニカルシールは何らかの原因で水が漏れ出すと交換が必要です。
メカニカルシールはメンテナンスフリーですが目視点検は必要です。
メカニカルシールの交換は専門業者に依頼する。
メカニカルシール交換は分解前準備前と試運転前の準備が重要です。
試運転のコツは少しずつ運転をかけて電流・水漏れ・異音・振動・水圧力の順で確認し異常がなければ連続運転しましょう。
最後までありがとうございました。
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